新宿の緑を眺める、大人の休日ランチ『MORETHAN GRILL』

窓の外に広がるのは、新宿のビル群ではなく、緑。

まるで街のざわめきが一瞬で遠のくような静けさの中で、

香ばしいグリルの香りとともに、昼の光がテーブルを満たす。

「MORETHAN GRILL」は、西新宿のホテル〈THE KNOT TOKYO Shinjuku〉の2階に佇むダイニング。

都会の中心にいながら、まるで別世界に迷い込んだような“ゆとりの時間”がここにはある。

ランチコース（3,850円）は、ひと皿ごとに香りと温度のリズムがある。

前菜には、ビーツで色づけしたサーモンのマリネや柿の白和え。

甘みと酸味の重なりが、口の中でやさしく溶けていく。

鱧（はも）のフリットは、ふわりと軽い衣の中に旨味を閉じ込め、

淡路産玉ねぎとマルサラソースの芳醇な香りが余韻を残す。

メインの鴨胸肉の低温調理は、噛むほどに甘みが広がり、

添えられたバターナッツかぼちゃのピュレと万願寺とうがらしが

季節の温度を感じさせてくれる。

パンは1階のベーカリー〈MORETHAN BAKERY〉の特製。

フムスのように見えて豆腐を使ったディップが添えられ、

和のニュアンスをさりげなく織り込むのもこの店らしい。

店内は高い天井と大きな窓が印象的。

窓の外には新宿中央公園の木々が広がり、

昼は明るく開放的、夜はライトアップされた緑が幻想的に映える。

座席はソファやカウンターなどゆとりある配置で、

昼下がりには光がテーブルに柔らかく落ち、

夕刻にはキャンドルのような照明が空気を静かに変える。

訪れる人の多くは30〜50代の女性客。

穏やかなBGMとスタッフの落ち着いた所作が、

ホテルレストランならではの上質さを感じさせる。

ランチ利用なら、平日でもほぼ満席。

静かな空間を確保したいなら事前予約がおすすめだ。

接客はきめ細やかで、

シェアする旨を伝えると取り分け皿まで美しく整えてくれる。

このさりげない気配りが、また来たくなる理由のひとつ。

休日のランチデート、仕事帰りの軽いディナー、

あるいは自分へのご褒美ランチにも最適。

日常の延長線上に“非日常”がふと現れるような時間が過ごせる。

再訪したくなる理由は、

“料理の完成度 × 空間の余白 × 接客の温度”。

ガラス越しに揺れる木々を眺めながら、

炭火の香りに包まれて過ごす時間は、

忙しさを一瞬忘れさせてくれる。

この静けさこそ、MORETHAN GRILLの真価だ。